1日限りのニセ恋人のはずが、精鋭消防士と契約婚!?情熱的な愛で蕩かされています


柾の案内で会場に入ると、もう大勢の人が談笑していた。
形式ばったパーティーではなく、立食式のカジュアルな会のようだ。

(思ったとおり、いろんな職種の人が集まっているわ)
 
この街で有名な、老舗の跡継ぎの顔が見える。
これから成長が見込めるIT企業を立ち上げた人や、建築デザイナーも出席していると柾が教えてくれた。

地方都市とはいえ、この街は県庁所在地だし東京からの交通の便もいい。
市の中心地から少し離れたところには工業団地があって、最新の電子機器を製造する会社や大手の運輸会社の倉庫を誘致している。

将来を見据える若い経営者や後継者たちにとって、気軽に仲間を作ったり情報交換したりする場は大切なのだ。

開会の挨拶と乾杯のあとは自由に歓談して過ごすことになっているらしい。
希実の後押しもあって、紗彩は柾の知人たちに挨拶して回ることにした。

柾は紗彩のことを梶谷乳業のひとり娘というだけでなく、商品開発を担当しているということをきちんと紹介してくれた。
もちろん自分の婚約者の友人だと付け加えるのも忘れてはいない。

『新社長になってからの業績の伸びは』とストレートな質問を受けることもあったが、紗彩は新しい商品を開発中だと堂々と答える。

(ここでは新製品をアピールして、会社の経営に安心感を持ってもらわなくちゃ)

山岡の勧める縁談を断った以上、紗彩は現実と向き合おうとしている。
これまで以上に、会社のためにできることはなんでもしようと意気込んだ。





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