1日限りのニセ恋人のはずが、精鋭消防士と契約婚!?情熱的な愛で蕩かされています
様々な業種の人たちに挨拶したり、事業についての質問に答えたりしていたら一時間くらいは経っただろうか。
ひととおり話し終えてホッとひと息ついたら、喉がカラカラだった。
「お疲れさん。よく頑張ったね」
「柾さんありがとう。おかげでいろんな方にご挨拶できたわ」
「なにかあったら声かけてくれよ」
希実のところへ戻る柾とはいったん別れ、紗彩はウエイターからノンアルコールのドリンクを受け取った。
(軽く食べようかな)
出席者たちは会場のあちこちで食事をとりながら賑やかにおしゃべりしている。
最初のうちは堅苦しい空気だったが、少々アルコールが入ったせいかリラックスした雰囲気に変わっていた。
年齢層に合わせたアップテンポのBGMが流れ始めて、踊りだす人もいるくらいだ。
(みんな楽しそう)
オードブルやローストビーフなどの料理を見ても、なにも食べる気になれない。
久しぶりに華やかな場所にきて、思った以上に緊張していたようだ。
それに紗彩は梶谷乳業の後継者として初めて味わう責任の重さも感じていた。
これくらいで疲れるなんてまだまだ未熟だなと思いながら、希実たちはどこかと会場を見渡してみる。