1日限りのニセ恋人のはずが、精鋭消防士と契約婚!?情熱的な愛で蕩かされています
「でも山岡さんからの縁談はお断りしましたし、結婚相手だなんて言われても困ります」
紗彩がはっきりと答えると、さっきまで笑顔だった金子の表情が一変した。
「断った?」
「あの、ですから、縁談はなくなったと思うのですが」
「冗談じゃない。こっちはつぶれそうな会社を援助してやるって言ってんだ」
「は?」
ますます意味がわからない。
いくらなんでも梶谷乳業は『つぶれそう』と言われるほど落ちぶれてはいない。
「失礼ですが、どちらの金子様ですか」
「金子製作所の息子だといえば、わかるか?」
「はあ」
たしか機械の製造や設備工事を請け負っている会社だが、梶谷乳業とは直接の取引はない。
過去の工場の建設や修理にも関わっていないはずだ。
誰か近くを通らないかと期待したが、会場は盛り上がっていたから誰も出てこないだろう。
見渡したところホテルの従業員もいない。この人から離れたいと、紗彩は焦った。
「すみませんが、私はこれで失礼いたします」