1日限りのニセ恋人のはずが、精鋭消防士と契約婚!?情熱的な愛で蕩かされています
紗彩が軽く頭を下げてその場を去ろうとしたら、金子がいきなり腕を伸ばしてきた。
「あっ」
突然のことで、避ける間もなかった。
紗彩の左腕はがっちりと金子に握られている。
「つれないなあ。ちょっと上に付き合ってくださいよ~」
「離してください!」
紗彩が逃れようとして大きく身をよじった弾みで、金子のジャケットを引っ張ってしまった。
ジャケットの前身頃が乱れた瞬間、シャツの胸ポケットにホテルのキイらしいカードが見えた。
(この人、なに考えてるの⁉)
怖くなった紗彩は、ますますジタバタと体を動かす。
すると金子の腕に力が入って、腕の痛みが強くなってきた。
「やめてください!」
彼に捕まれている左腕さえ振りほどけたらと、小ぶりのパーティーバッグを持っていた右手を思いっきり振り回す。
偶然だが、彼の頬か顎のあたりにバッグがあたったらしい。
「いてっ」
金子がやっと手を離したので、紗彩の体は自由になった。
だが顔に手を当てた金子は、ますます機嫌が悪くなって怒鳴りだす。
「この暴力女!」
「ご、ごめんなさい」
「こっちが下手に出てやったのに、なにするんだ!」
逃げるどころか、もっと危なくなってきた。