政略結婚ですが、幸せです ~すれ違い夫婦のやり直し計画~




「実は白川ホールディングスが計画なさっている鈴ケ鳴高原の観光開発について、兄に意見を聞いてみました」
 
紗彩は白川ホールディングスになんのメリットもない援助をしてもらうわけにはいかないと考えて、高原に住んでいる兄に相談してみたのだ。
たまたま地域で牧場を経営している若手や近隣の果樹園のオーナーたちが集まって、将来に備えた経営戦略を考えているところだという。
その人たちに意見を聞いてみたら、今後のために協力したいと申し出てくれたと兄から返事がきた。
このまま地方都市の中で寂れてしまうのではなく、白川ホールディングスの協力を得て、新たな観光地として生き残りをかけたいという。

「それはありがたい。この前の視察では役所の人たちと話しただけだったんだ」

全国のリゾート候補地をあちこち見て回ったが、具体的な場所の決定はこれからのようだ。

「梶谷乳業への援助と、高原の観光開発は同時進行になりそうだな」
「梶谷乳業でも現地だけで販売する商品を開発してカフェで提供したり、お土産として販売できたらと思っています」

おそらく鈴ケ鳴高原が最終的に選ばれると正親が言うからには、すべて承諾してくれたということだろう。
紗彩はホッと胸をなでおろした。最悪の時に救いの手を差し伸べてくれた結都には感謝の気持ちしかない。
たとえ結婚が条件だとしても、会社は助かったのだから。

「高原ならソフトクリームかしら。私大好きなの」

千穂が楽しそうに現地のカフェで提供するスウィーツを提案してきた。
彼女は経営には全く興味はないようだが、美味しいものには自分なりの意見がありそうだ。

「ソフトクリーム、いいですね」
「人気がでそうよ。あ、この牛乳を使うのならジェラートの方がいいかしら」
「どちらが合うか、試作してみます。プリンにも挑戦したいと思っています」
「固め? それとも柔らかめ? レシピは? 料理研究家に知り合いがいるけど」

千穂はますます乗り気になったのか、すくっと立ちあがると紗彩と結都の間に割り込んできた。




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