政略結婚ですが、幸せです ~すれ違い夫婦のやり直し計画~
梅雨雷
しとしとと、長雨が続いている。
うんざりする毎日だが、これを過ぎれば季節はいっきに夏に向かうだろう。
「今日も一日よろしくお願いします!」
朝一番に、研究開発室内に大きな声が響く。
それから打ち合わせをするのが研究開発室の朝のルーティーンだ。
「そろそろですか?」
室長が紗彩に声をかけてくる。
「そろそろです」
紗彩がゆっくりと答えると、みんなパッと明るい顔になった。
青年会議所や椎名柾の協力もあって、少しずつだが新商品の前評判は高くなっている。
援助を申し出てくれた会社も数件あり、面談を控えていた。
「あとは売り出すだけです!」
スタッフたちから拍手がわいた。
紗彩がこれからの進め方を相談をしようと思っていたら、内線電話が鳴った。
始業時間前に電話連絡があるのは珍しい。
室長がおもむろに受話器を取ると、大きな声が漏れ聞こえてきた。
【社長がお倒れになりました! 今、救急車を呼んでいます!】
「ええっ?」
聞こえてきた声は山岡のものだ。
「紗彩さん、早く事務所へ!」