1日限りのニセ恋人のはずが、精鋭消防士と契約婚!?情熱的な愛で蕩かされています
いわゆる会社同士の利害で成り立つ、政略結婚のような話だ。
「それを君が断った」
「はい」
「ほかには頼れるところはない?」
「いくつか援助を受けられそうな会社が見つかってはいるのですが、こうなったからには一日でも早い方が……私からもう一度あの人にお願いしてみようと思います」
「え?」
思いつめたような表情から、会社のために最低な男との縁談を受け入れようとしているのがわかった。
「今度はむこうから断られるかもしれませんが」
正当防衛とはいえバッグで相手を殴ってしまったことを思い出したのか、苦笑いしているのが逆に痛々しい。
「すみません。関係ない方に、こんな内輪の話を聞かせてしまって」
「いや、話を聞かせてもらってよかったよ」
結都の中で、また閃いたものがある。ホテルで会った夜と同じ感覚だ。
心の中で思いついたことが、考える間もなくスラスラと口から勝手にあふれだしてくる。
「つまり君は、すぐに資金援助してくれる相手となら、どんな男とでも結婚するというわけだ」
「そんな言い方……」
図星だったのか、結都の言葉が気に入らなかったのか、不機嫌になったのが見てとれた。