1日限りのニセ恋人のはずが、精鋭消防士と契約婚!?情熱的な愛で蕩かされています



「会社のためなら結婚できるというのは、うそじゃない?」
「母や会社を助けたい気持ちに、うそなんてあるわけないです!」

反論しながら頬が赤らんでいるのは、機嫌の悪さが増しているからだろう。

「それなら、俺と結婚しよう。白川ホールディングスが梶谷乳業を援助すると約束する」
「はい?」

普段の結都は、どちらかというと慎重なタイプだ。
消防士になったことだって、何年も秘かに考えを巡らせてから実行に移したくらいだ。
それなのに彼女が絡むと、どうしてか感情的になって性急にものごとを進めたくなる。

大きく見開いた目、驚いて少し開いたままの唇、彼女のキョトンとした顔を見て、結都はやっとわかった。

考えるまでもなく、自分はあの男と彼女が結婚するのが許せなかったのだ。
会社のためにというなら、相手は結都でも文句はないはずだ。

「援助するかわりに、形だけでいいから籍を入れて、俺と結婚したことにして欲しい」
「籍をいれる?」
「政略家紺の相手が白川ホールディングスの息子じゃ、不服か?」

彼女には恋人役をしてもらった実績がある。
父は彼女を気に入っていたから、結婚も梶谷乳業への援助もすんなり了解するはずだ。

「でも、でも、この前は、恋人のフリだけでいいってお話しでしたよね」
「ああ。結婚をせかされて困っているって言っただろ。俺は消防士の仕事に集中したいんだ」

「は、はあ」
「父は君のことが気に入っているから、俺たちの結婚に反対しないはずだ。父が援助できないと言っても、俺が必ず援助する」

多少の資産なら、結都にもあるのだ。
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