1日限りのニセ恋人のはずが、精鋭消防士と契約婚!?情熱的な愛で蕩かされています
「ええっと」
どうしよう、どう説明しようかと紗彩がオタオタしているうちに、結都が話しを進めていく。
「以前、会社に防災点検で伺った頃からお付き合いを始めたんです」
「あ、あの時の消防士さんだったんですね。なんとなくお顔を覚えていますわ」
「先日、紗彩さんを父に紹介させていただきました」
「お父様にも?」
微妙に誤魔化しながらも、噓はついていない。
出会って日が浅いのに結婚するというドラマのような展開に、母の目は少し輝きを取り戻したようだ。
「父は白川正親といいまして、白川ホールディングスの……」
「まあっ! 大きな会社の社長さんですよね。お名前はニュースなどで存じあげています」
そんな家柄の人が相手だから怪しんでもよさそうなのに、母は信じ切っているし会話はすっかり結都のペースだ。
「父もすっかり紗彩さんファンで、喜んでくれています」
「紗彩をですか。うれしいこと」
母はなんの疑問も抱いていないようで、久しぶりに弾んだ声だ。
「紗彩ったら、こんなお話を黙っているなんて」
それどころか叱られてしまったので、不本意ながら紗彩は謝るしかない。
「ごめんなさい」
「ああ、責めているんじゃないの。私の体調を心配してくれたんでしょ?」
「うん」
紗彩は動揺を見せないようにするのがやっとだが、結都はますます多弁になる。
「結婚したら家族になるのですから、会社のことでもお力にならせてください」
「そこまで考えてくださっているなんて」