政略結婚ですが、幸せです ~すれ違い夫婦のやり直し計画~
「初めまして、梶谷紗彩と申します」
「結都の母の白川千穂です。よろしくね、紗彩さん」
艶然とした微笑みだった。それに気おされて紗彩の背筋がピンと伸びる。
年齢を感じさせない美しさだが、切れ長の奥二重の目が結都によく似ていた。
「どうぞ、お掛けなさい。お茶を準備させますからね」
「あ、よろしかったらこれをお召し上がりください」
紗彩が持参していたクーラーボックスを差し出した。
「これは?」
すんなり受け取った千穂が、バッグに重さを確かめるような動きを見せた。
ガラス瓶に入れてあるヨーグルトやアイスクリーム、それに保冷剤がぎっしりだから少々重いのだ。
「私が手がけた新商品です。召しあがっていただきたくて、お持ちいたしました」
「まあ! さっそくこちらをいただきたいわ」
千穂が弾けるような笑顔になった。美味しいものや珍しいものを食べ歩くのが大好きと聞いていたのは間違いなさそうだ。
白川夫妻がどんな感想を抱くかと思うと、ソワソワと落ちつかない気分になってくる。
紗彩は不安を打ち消そうと、キュッと唇をかんだ。すると、隣に座っている結都が紗彩の手を軽く握ってきた。
まるでお互いの緊張をほぐそうとしているようだ。