1日限りのニセ恋人のはずが、精鋭消防士と契約婚!?情熱的な愛で蕩かされています
「誰か来てください~」
あいにく看護師の姿も見あたらない。
なんとかしようと、患者に向かって声をかけたりジャケットを着せかけたりしようとするのだが、気持ちが焦るばかりだ。
ほんの一分が何時間にも感じられたとき、目の前になにかが降ってきた。
どうやらオレンジの服らしく、患者の半身まで広がるかと思えた火は一瞬で消すことができた。
紗彩が振り返ると、黒いインナーを着た背の高い男性が立っていた。
その人が着ていた上着なのだろう。
男性は患者を床に寝かせて、きっちりと保護している。
「急いで医師を読んできてくれ」
「は、はい」
紗彩が医師を呼んでくると、男性は冷静に患者の様子を見ていた。
「ひどい熱傷です。左上肢と、首から左肩にかけて……」
すぐに応急処置に取りかかれるように上体を確認していたらしく、医師や看護師にテキパキと説明している。
どうやら彼は定期健診に来ていた消防士で、しかも救急救命士の資格を持つレスキュー隊員らしい。