政略結婚ですが、幸せです ~すれ違い夫婦のやり直し計画~




***



二日ばかり入院したが、自宅に戻った紗彩はなぜか結都の部屋のセミダブルベッドに横たわったままだ。
しかも、結都まで隣で寝ころんでいる。
体調はどこも悪くないのだが、結都が心配して紗彩をベッドから出さないのだ。

「もう大丈夫よ、結都さん」

「怖いんだ。君のそばにいないと」

ギュッと紗彩は抱きしめられる。

「体調は問題ないのよ」

帰宅してすぐにベッドに横になったのに、結都は安心できないようだ。

「どこにもいかない。あなたのそばにいるから」
「紗彩」

「だから、あなたも私のそばにいてね」

少し伸びてきた紗彩の髪が肩先で絡まっているのをみつけたのか、結都が指で解きほぐしてくれる。

「洗ってないから、煙の臭いがするでしょ」
「シャワー浴びるか?」
「ええ、すっきりしたい」

それならと、結都にヒョイと紗彩を抱き上げられる。

「え?」
「バスルームまで運ぶよ」

紗彩は横抱きにされたまま結都の肩を叩くが、止まってくれない。
軽々と抱かれたまま、バスルームまで運ばれた。

「あ、ありがとう」

紗彩が礼を言っても、まだ結都はそばにいる。

「あの」
「シャンプーするんだろ」

結都の方が先にシャツを脱いでしまった。
見慣れてきたとはいえ、明るいバスルームで筋肉美を披露されてはたまらない。

「ひとりで洗えるから!」
「またフラついたら危ないじゃないか」

抵抗しても、ムダだった。
あっという間にシャンプーされて、ボディーソープで綺麗に洗われてしまった。
気がつけば、リビングルームのソファーに座って綺麗に洗った髪の毛をドライヤーで乾かされている。
結都の大きな体の前にちょこんと座らされて、すっぽりと覆われた状態だ。

「さっぱりしただろ」

紗彩の髪がお気に入りなのか、結都はツヤツヤになったのを見てご機嫌だ。
ほんの少し前までぎくしゃくしていた暮らしがうそのようだ。
優しくてたくましい結都に、紗彩はすっかり甘やかされていしまっている。

「結都さん」

紗彩は後ろにいる結都にもたれかかった。

「これからもよろしくお願いします」
「こちらこそ」

出会ってから今日まで、ふたりの間に起こった出来事はいつか笑い話として語りあえるだろう。
一緒に眠って、朝は同時に目覚めて。笑いあったり、たまにはけんかしたりしてこれからずっと過ごすのだ。

(年をとっても、お互いに元気に暮らせますように)

紗彩は背中に結都の温もりを感じながら、そんなことを願っていた。
結都の両腕にしっかりと抱きしめられるまで、あと十秒。
それから甘いキスが始まる予感がした。






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