1日限りのニセ恋人のはずが、精鋭消防士と契約婚!?情熱的な愛で蕩かされています
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結人にとって、誰かと暮らすというのは久しぶりだ。
大学に入った時に家を出てから、ずっと気ままなひとり暮らしだったのだ。
そんな自分が紗彩と暮らして大丈夫なんだろうかと気にはなっていた。
紗彩は愛らしいし、おまけに料理も上手だ。
いつも気を遣ってくれるし、職場関係からの祝いにもきちんと対応してくれる。
『形だけでも妻の役割です』といわれて、ああそうだ、形だけの妻だったと残念に思うほどだ。
梶谷家での生活は快適だし、毎日のトレーニングにはピッタリな環境だった。
近所の坂道を軽く走るのもいいし、広い庭でも体を動かせる。
いい汗をかいてシャワーを浴びるのは気持ちがいいし、おまけにその後には、美味しい朝食が待っている。
体力を維持するための食事を考えてくれているのか、毎朝のバランスがいいメニューに頭が下がる。
このうえ夕食まで紗彩の手料理となると、負担をかけてしまいそうだ。
申し訳ないが、紗彩からの提案は断った。これ以上は、がまんできそうにないからだ。
がまんというのはおかしいが、紗彩を愛したいという欲望との葛藤だ。
暮らし始めてすぐに、結都は紗彩を本当の意味で『妻にしたい』と思い始めていた。