1日限りのニセ恋人のはずが、精鋭消防士と契約婚!?情熱的な愛で蕩かされています
紗彩の気持ちを確かめるのは、今ではないと自重している。
せっかく政略結婚してくれたというのに、これ以上紗彩を混乱させたくなかった。
ただ、時おり紗彩からの視線は感じていた。
結都を見てポッと頬を染めたり、慌てたりしているのがまたかわいい。
お嬢様育ちで男性とのふたり暮らしに慣れているはずないのに、意地を張っているのか平気なフリをしている。
そんな紗彩に対して(もしかしたら脈があるのでは)と、結都は少々大胆になっている。
キッチンに立つ紗彩のすぐ後ろに立ってみたり、頬にかかるうっとうしそうな髪の毛を耳にかけてみたり。
そのたびに紗彩は目を丸くしているが、その顔は真っ赤だ。
紗彩は結都の肩あたりまでしか身長がないから、話しかけるときは少しかがみこむことになる。
顔を近づけると、紗彩はサッと視線をそらすのだ。
紗彩がもっと自分に心を開いてくれたら、きっとこの結婚は本物になるだろう。
そんな日がくることを、結都は期待している。
「にやけた顔してるぞ」
ふたりで暮らし始めてから、三枝に何度からかわれたことだろう。
無表情だと言われてきたのに、今の結都は紗彩から影響を受けているようだ。
この暮らしを失いたくない結都だが、ふたりの関係を進める前にやらなければならないことがあった。
結都はまだ紗彩に話せずにいた。