1日限りのニセ恋人のはずが、精鋭消防士と契約婚!?情熱的な愛で蕩かされています
母が梶谷牧場で過ごし始めてから、どんな様子か義姉からはまめに知らせが届いた。
秋の深まりとともに、高原の風景が毎日変化していくのを見ては感動しているという。
双子の男の子の相手にも慣れて、義姉も助かっていると嬉しそうだ。
少しずつ気力を取り戻しているのが、送られてきた写真の明るい表情を見てもよくわかる。
よほど孫との暮らしが楽しいのだろう。
今の紗彩には望んでも得られないものだから、兄と暮らすことになってよかったと思っている。
ようやく安心できるようになったある日、紗彩が出勤して自転車を置いていたら珍しい人に声をかけられた。
「紗彩さん、おはよう」
工場長の田村だ。工場を管理している彼に話しかけられることは滅多にない。
田村は新製品のヨーグルトをとても気にいってくれて、なんとか今ある生産ラインで製造できるよう考えてくれた人だった。
「おはようございます。田村工場長」
「今、チョッと時間ありますか?」