さりげない、あと
「ねー、起きないのー!私仕事行くけど」
部屋に響くそんな声でうっすらと目を覚ます。
会社まで近いところに住んでいる彼女にとって、朝はギリギリまでゆっくりするのがポリシーだという。
だからいつもスニーカーで走って職場に来ていたのか。
そんなことを思いながら俺は掠れる声で「俺今日非番だから」と言った。おそらく玄関にいる彼女には聞こえていないだろう。
「いってきます!」
そんな声とともに玄関の扉が閉まる。
完全に目が覚めてしまった俺は体を起き上がらせて寝室を出た。
テーブルの上には1人分の朝食が置かれている。
自分のために用意してくれたものだと分かった時思わず口角が上がった。
そして目玉焼きとアスパラが置かれているお皿の端にマヨネーズが出されているのが目に入る。
「はは」と声を出して笑った。
確かに、これは『得意なこと』と言っていい。