キスより甘い毒りんご
白雪ちゃんの荷物を運び終えると、なんだか私の部屋が急に充実した。

私は元々ミニマリストで、自分が思う必要最低限の物しか持っていない。
白雪ちゃんの持ち物で賑やかになったクローゼットもチェストもマルチボックスも不思議と嫌じゃなかった。

「ごめんね。なんか……私の部屋みたいになっちゃって」

「平気だよ。白雪ちゃんが生活しやすいのが一番なんだから」

「優しいのね」

「普通じゃない?」

「そんなわけない。昨日今日いきなり現れた奴に親切にできるもんじゃないよ」

「じゃあやっぱ……白雪ちゃんは私の推しなのかも!?」

「推し?」

「そう。今までは″いいなー″って憧れてただけで気づいてなかったけど。目の前に現れて初めて自分の気持ちに気づく的な?だから良く思われたくて優しくしちゃうみたいな……って、本当のファンさんに失礼だね。撤回、撤回」

「して?」

「うん?」

「私を、ののの推しにしてよ」

「えー。経験ないよ。分かんない。推しとか、なんか……」

「じゃあ私がののの初めてだね?特別なことはしなくていいんだよ?めーいっぱい好きでいてくれたら」

う……かわいい。可愛すぎる。
こんなの反則だ。

床に両手をついてグイッと私のほうに身を乗り出した白雪ちゃん。
本当に星を飼ってるの?ってくらいツヤツヤでキラキラの瞳。
ずるい生き物。
< 12 / 85 >

この作品をシェア

pagetop