キスより甘い毒りんご
「白雪ちゃんを見てる時は白雪ちゃんのことしか考えないよ。だって他のこと考えてる余裕ないくらい白雪ちゃんは素敵だもん」

「……ほんとに?」

「うん。ずるいかもだけどさ、肉眼で認識しちゃったからっていうのもあるけど、たぶん。でもどんどん白雪ちゃんの魅力に夢中になってるよ。だからもっと素敵なところ知りたいな」

ギューッて抱き締められてしまった。
アールグレイみたいな爽やかな香りがした。
白雪ちゃんの吐息が首筋に触れて変な感じがした。

私から離れた白雪ちゃんは眉間に皺を寄せて結に言い放った。

「あなたは呼ばないからね!いや、やっぱり呼ぼうかなぁ!?私に夢中になってるののを見て嫉妬すればいいのよ!」

結は俯いて、明らかに笑いをこらえている。
微かに肩が震えている。

結、頑張れ。
耐えろ。

「結も一緒に見れるなら嬉しいなぁ。結もね、白雪ちゃんの曲よく聴いてるんだよ」

「……それはありがとう。でもスタジオでイチャつかないでよねっ!」

「しないしない」

なんとか白雪ちゃんの気分も落ち着いて、
それからは三人で一緒に白雪ちゃんの歌唱シーンを観た。

私と白雪ちゃんがソファに(密着して)座って
結は床に下ろされた。
ご慈悲みたいにクッションだけが与えられた。

白雪ちゃんとの同居生活二日目。
なんでこんなに夢中になってくれているのかは分からない。

白雪ちゃんは一人っ子で、
国民的アイドル特有というか、学校にもまともに出席できていない。
親友と呼べる存在も居ないのかもしれない。

パズルのピースがカチッてハマるみたいに、
私の存在がハマったのかもしれない。

それならもちろん嬉しいけれど。

いきなり敵意を剥き出しにされた結は大して気にはしていないみたいだった。
私は仲良くして欲しいけれど……。
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