キスより甘い毒りんご
「ママってば!聞こえてますかー!?」

「もー!聞こえてるわよ」

「だったら返事してよ」

「まったく……。ごめんねぇ。うちの子ってばせっかちで」

「女子高生なんてみんなこんなものです」

「あらぁー。さすが美人は違うわねぇ。心に余裕がある」

まただ。
私そっちのけで盛り上がる二人。

私のことなんてやっぱりお構いなしに
ママはうっとりとした瞳で言った。

「ほんと、あの子そっくり」

「あの子?」

「あら……あぁそうね。ごめんごめん。まだ言ってなかったわね」

だからさっきからずっとそう言ってるのに!

ようやく私の顔を見たママに口を尖らせてやった。

「ママ……あのさ……」

「さ、とりあえずあんた、自己紹介しなさい!」

もう!またグイグイ進めていくんだから!

「……えっと、野々井(ののい)ののです」

「……なんて?」

「ののい……のの……です」

「変なの。私は、」

森野白雪(もりのしらゆき)ちゃん。知ってます」

変なの、って言われたことにはさしてなんとも思わなかった。
ののいののなんて韻を踏すぎている名前、
十七年も生きていればとっくに慣れる。

「ふーん。まぁ、そっか。タメだしね」

「いや、あの。タメとかそんな問題じゃなくて」

「どんな問題?」

「どんな……って。だから白雪ちゃんは……」
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