キスより甘い毒りんご
「ねぇ、今日は一緒に寝よっか?」

お風呂を済ませた白雪ちゃんが髪を乾かし終わって、
「夏は夜も蒸し蒸しするね」って言いながら部屋に入ってきた……と思ったら突然のお誘い。

いくら女の子同士だからってスーパーアイドルにそんなこと言われたら反応に困る。

ドギマギしながらキョロキョロしていたら
あなたですよーって目の前で手のひらを振られた。

「無理だよ!シングルベッドだよ、狭いよ」

「いいじゃん。女子同士なんだし」

「だからそういう問題じゃなくてー!」

「じゃあどういう問題なの?断るほうが贅沢よ。みーんなが私と寝たがってるのに」

「その言い方はおかしい!」

「あはは、確かに」

私はベッドのふちに腰掛けて
隣をぽんぽんってしながら座るように白雪ちゃんを促した。

白雪ちゃんは大人しく従ってくれた。

「ねぇ、なんでそんなことばっか言うの?」

「そんなことって?」

「同性だからアレだけど、もし異性ならその……誘うようなことばっか。てか同性だからますます意味分かんないよ」

「あら。ののって″そういう恋愛″に偏見あるタイプ?」

「そうじゃなくて。偏見なんて全然ない。自由だし、人の幸せを誰かの当たり前で決めつけちゃいけないと思う。でもそれがもし自分に向けられてるのならそれは意味分かんないなって。私はそういう風に思ってもらえるほど魅力的じゃないから」

「でも結くんはののが好きでしょ。魅力がないのに好きになったの?」

「それはっ……分かんないよ。そんなことないって信じたいけど」

「でしょ?そりゃ誰だって自分を大絶賛して生きてなんかいられないわよ。ま、私はそうしてなきゃ勝ち残れない世界にいるけどね?」

漫画みたいに「ふふん」って笑った白雪ちゃんに自然と笑みがこぼれた。
< 24 / 85 >

この作品をシェア

pagetop