キスより甘い毒りんご
「じゃあどうして?白雪ちゃんはそんなに私に対して距離感バグなの?」

「のの」

「うん?」

「誰かとスキンシップを取ったり近づきたい、特別に仲良くなりたいって想う感情を、すべて″恋愛″にしちゃうのはナンセンスよ」

「ナンセンス?」

「そう。私はね、あなたが女性だからこの距離感が適切だとか、女性だから恋愛はしちゃいけないとか、男性を好きになるなら恋愛じゃなきゃいけないとかは考えない。その人がそこに居てくれるだけでいい、笑顔になれる、不安にならなくていいって、そんな気持ちを全部恋愛と結びつけるなんて勿体無いじゃない」

「んー。家族みたいなってこと?」

「それともちょっと違うわね」

白雪ちゃんが微笑んでいる。
本当に神様、或いは大天使様みたいに神々しい。

もしも白雪ちゃんが人間なんかじゃなくてアートとかなんか……そんな感じの概念だったなら
おうちの一番よい場所に祀りでもして
毎日毎晩祈りを捧げることができたなら、それだけで幸福になれそうな気がする。

けれど白雪ちゃんは″私達とおんなじ″人間で、
たとえそんな感じの概念だったとしても彼女はそれを望まないだろう。

きっと同じ立場で、同じ目線で″人間″になりたいと願うだろうし
こうやって人間同士で交わし合うお喋りの中に幸せを見出せる人なんだと思う。

「家族とも違うのね」

「家族は大切だと思う。私だって両親と離れてる今は寂しいわ。でもそのおかげで野々井家と出逢えた。家族でしか満たせない安らぎとか平穏は確かにあるのかもしれない。それが当たり前だとは思わないけどね?だって自分が与えられた環境が世の中の当たり前でも、正解でもないから。ののは、家族では満たせないものもきっと持ってるのよ。ほら、家族にだって言えないことって現にあるじゃない?片思いの相手がいる子ならそういうこととか、それから……キスってどうやるの、とか」

白雪ちゃんが身を乗り出して、ベッドに触れている私の手のひらを掴む。
反射的に体を反らした私に白雪ちゃんはイタズラをたっぷり含んだ瞳で笑った。

「じょーだんだよ」
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