キスより甘い毒りんご
駅前で待ち合わせをしていた結とはすぐに合流できた。
すらっと身長が高くてスタイルのいい結は人混みに紛れていても見つけやすい。

お待たせ、って手を振った私に結が「緊張してる?」って訊いた。

「どうして?」

「いつもより表情が硬い」

「そうかも?だってテレビ局なんて初めてだもん」

「職場体験でも経験できないもんな」

「ほんとにー。白雪ちゃんは凄いよね。それが当たり前なんだもん」

「ね。俺達も楽しまなきゃ!二度と経験できないかもしれないんだし」

ニッて笑った結の手を握った。

テレビ局に着いてメインエントランスに入ると、一般客に向けて解放している見学スペースの先に、
関係者だけが立ち入りを許可されたロビーが続いている。

勝手に侵入できないように駅の改札口みたいな機械が設置されていて
関係者達が交通系ICカードみたいな物をピッてやると通れるようになっていて、
スムーズに通り抜けていく大人達がかっこよかった。

通り抜けた先にはテレビで見たことのある人も居て妙に感激してしまう。

私と結は白雪ちゃんに貰ったパスを警備員さんに見せた。
警備員さんは「少々お待ちください」っていって、どこかに電話をかけてから、先に進むことを許可してくれた。

不正や、パスを盗んだ可能性だってある。
本物かどうか確認したのだろう。

安心・安全を顔に張り付けたような警備員さんで、なぜか私が安心してしまった。
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