キスより甘い毒りんご
「すごい。あの二人だけ世の中と作画が違うよね」

「あはは。確かに。やっぱ白雪ちゃんって可愛いんだな」

「可愛いって何よ。改めなくても決まってんじゃん」

「異次元だよなぁー」

「私もあんな風に生まれてたら人生違ったのかな」

「不満ですか?」

「え?」

「のので生まれて、俺と出逢った人生は」

結が私を覗き込む。
優しい目。

不満だとか思ってるわけないって分かりきってる余裕を含んだ表情だ。
悔しいから「内緒!」って言ったら「えー残念」って言いながら視線を撮影風景に戻した。

不満なわけないよ。
贅沢だよ。

贅沢過ぎるから不安になるんだよ。

白雪ちゃんが生きてる世界を目の当たりにするたびに
白雪ちゃんになりたいって思う。

そうなってしまったら死ぬほど努力しなきゃいけなくて、
もしもメンタルが私のままだったら絶対にムリそうなのに。

羨ましい感情ばかりが膨れ上がって、私ってこんなに卑しい人間だったかなって落ち込んじゃうんだ。

結は私のままで私を好きでいてくれるけれど
現に″同じ人間″として白雪ちゃんみたいな子が存在していたら自信だって失くしちゃう。

厄介なのは私自身が、白雪ちゃんを大好きだってこと。

嫌な気持ちなんて持ちたくないし
くだらない嫉妬なんてしたくない。

出逢った頃のまま、ずーっとおんなじ感情で憧れて、
たった少しの白雪ちゃんからの供給だけで世界一ハッピーになれていたら。

好きな人間にジェラシーを抱くなんて、惨めだ。
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