キスより甘い毒りんご
一時間くらい見学させてもらってから私達はお礼を言ってスタジオを出た。

外に出てからも私達は夢見心地で、間違いなく夏休みの一大イベントになった。
普段は見ることのできない世界を体験させてもらえて
白雪ちゃんには本当に感謝だ。

その日、いつもより早めの十九時頃には帰宅した白雪ちゃんも少し興奮気味だった。

私達に見られてて余計に緊張したとか、
スタジオでイチャイチャしすぎ!とか、
いい刺激になったから歌の収録も今度ぜひ観覧に来てねとか、
テンション高く喋った白雪ちゃんはまたルンルンな表情でシャワーを浴びにお風呂場へと消えていった。

白雪ちゃんにいい刺激を与えることができて私も嬉しかった。
好きな人と高め合えるのってやっぱり嬉しい。
自分の存在が好きな人にとって無意味じゃないんだって思えるのは、今日の大きな収穫だった。
そう思えたのは結と、白雪ちゃんの無邪気な笑顔のおかげなんだけど。

そう言えばさっきうっかり聞き漏らしてしまいそうな勢いで、
白雪ちゃんは「結くんにもお礼言っておいてね」って言った。

その言葉を思い出して私は自分のことみたいに頬がゆるんだ。

白雪ちゃんが結の存在を認めてくれた瞬間に思えたから。
< 37 / 85 >

この作品をシェア

pagetop