キスより甘い毒りんご
八月に入って一週間が過ぎた。

白雪ちゃんは元々超多忙だろうに夏休みはますます過密スケジュールみたいだった。
未成年だから就業時間(って言うのかな?)は考慮されているみたいだけど朝がとにかく早い。
体を壊さないか心配になってくる。

窓を閉め切っていても蝉の大合唱が余裕で聴こえてくる。
ママがお昼ご飯に準備してくれたそうめんをすすりながら頭の片隅には常に宿題のことが存在している。

結や友達と遊んでいても夏休みの膨大な宿題って奴はいつも邪魔をしてくる。
それが嫌ならさっさと取り組んで終わらせてしまえばいいし、
後からめちゃくちゃに困り果てるって分かってるのにどうしてやり始める前ってこうも億劫なんだろう。

家に居てもどうせダラダラしてしまってエンジンなんてかからないから
図書館で宿題をすることにした。

一番嫌いな数学のドリル。
これさえ進めていれば気持ちも少しはラクになる、はず。

「ママー。ちょっと図書館行ってくるね」

玄関でサンダルを履いていたら、夕飯用の買い物に出掛けていたママがちょうど帰ってきて鉢合わせした。

「図書館?宿題でもしに行くの?」

「お見通しですか」

「そろそろお尻叩かなきゃって思ってたところよ」

「勘弁してください」

「それよりもコレ!」

それよりも……?

気になったけれど意は唱えずにママが買い物袋から財布を取り出して、抜き取ったチケットのような物をジッと見つめた。

「何コレ」

「お祭りのサービス券よ!」
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