キスより甘い毒りんご
「えー!貰ったの?」

来週、八月十五日に地元の神社で夏祭りがある。
去年は結と行ったなぁ。

高一の夏休み前から付き合い始めた私達はまだ初々しくて
花火を見上げている間もずっとドキドキしていたことを憶えている。

「スーパーの奥さんからいただいたのよ。商店街で福引やってるでしょ?当たったらしいんだけどこの週はご家族でご旅行ですって。勿体無いから是非って」

「やったぁー」

チケットは五枚ずつが切り取り線で繋がっていて三枚綴りになっている。

焼き鳥、焼きそば、たこ焼き、フルーツ飴、ドリンク。
内容は三枚とも同じだった。

「結くんと行くでしょ?」

「……白雪ちゃんは行けないかなぁ。ちょうど三枚あるし」

「うーん。どうかしらね。難しいんじゃない?」

「そうかなぁ……。でも誘うだけ誘ってみよ!」

履きかけのサンダルを脱ぎ捨てて、ママから貰ったサービス券を持って部屋に直行した。
まずは結に連絡しなきゃ!

玄関のほうからママが「ちょっと!図書館は!」って叫んでいる。

勉強ならいつだってできる。
特別な夏休みは今だけなんだから。

あぁ。夏休みの魔法って怖い。

頭の片隅にある数学のドリルのことなんて私はきれいサッパリ忘れてしまった。
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