キスより甘い毒りんご
その日の夜、帰宅した白雪ちゃんの表情は暗かった。

帰宅してすぐにシャワーを浴びて、
食卓についてからも表情は晴れない。

今日の夜ご飯は海老フライ。
白雪ちゃんの好物なのに。

「体調悪いの?」

訊いたママに白雪ちゃんはゆるく首を横に振った。

「海老フライ、白雪ちゃんの好物だよ」

言った私に白雪ちゃんは目を細めて口角だけを上げた。

「ありがと。食べるよ。おいしそ」

そう言って白雪ちゃんはサラダのミニトマトだけをつまんで口に放り込んだ。

「……無理しないでね?あっため直せば明日もきっと食べられるよ」

「のの。ありがとう、体調は本当に元気だから」

「″体調は″……?」

「……ごめんなさい。あなたとのことで落ち込んでるの」

握っていた箸をそっと箸置きに戻して白雪ちゃんは目を伏せた。

「ママ、お風呂入ってくるわね」

気を遣ってくれたのかママは私達を二人きりにしてくれた。
パパはまだ帰ってきていない。
最近は残業が続いていてお休みの日でもパパは疲れていてお昼前まで寝ていることが多かった。

白雪ちゃんが私のせいで落ち込んでいる。

頭の中がいっぱいになって、食べたものが全部逆流してきそうだった。
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