キスより甘い毒りんご
でも……それでも……。

「でもね、白雪ちゃん」

「ん……」

「それでも白雪ちゃんはそっち側の世界を選ぶんでしょう?」

「…………うん」

口角を上げた私に、白雪ちゃんは泣きながら、ずいぶんと頑張って笑った。

「白雪ちゃんがお仕事のこと大好きなの知ってるよ。私だけじゃない。白雪ちゃんを大好きな人達はきっとみんな知ってるし、白雪ちゃんが少しも苦しくないなんて思ってない。当たり前にあるはずの日常を我慢してでも私達を幸せにしてくれてる。だから私達だって白雪ちゃんに応えたい。白雪ちゃんが選んだ大好きな世界で笑ってて欲しいから」

「のの……」

「私はここに居るよ。疲れたり不安になった時に白雪ちゃんにはちゃんと帰る場所が在るんだってこと忘れないで。私の隣でなら演技も無理もしないでいい。ありのままでいい。どんな白雪ちゃんでも絶対に大好きだから」

「あり……がと……」

「私はもう白雪ちゃんの限界オタクなんだからさ!ぜーんぶ受け止めるんだから!」

「ふ……ふふ、なにそれ」

やっと笑ってくれた白雪ちゃんのお皿に海老フライを乗せた。
白雪ちゃんは手のひらで涙を拭った。

「さっ、食べよ!ママ、張り切って作ってたから悲しんじゃう」

「そうね。いただきます!」

この子を守ろう。
私にできることなら全部。

私の隣でならおんなじ世界で生きているんだって叫び続けよう。

恋や友情なんて聞き慣れた正しい肩書きなんて無くったっていい。
白雪ちゃんのことがただ大好きだって気持ちだけであなたの涙を止める理由になりたい。
< 43 / 85 >

この作品をシェア

pagetop