キスより甘い毒りんご
映画の上映は十三時からで、見終わる頃には十四時前だった。
お祭り会場の神社に向かうにはちょうどいい時間帯だった。

今日はすごくいいお天気で夕方前になってもまだまだ陽が高く昇っている。
雨が降らなくて本当によかったけれどあまりに良すぎる天気にすれ違う人達も眩しそうに眉間に皺を寄せている。

「あのねー結」

「うん?」

「今日の帰り、荷物多くなっちゃうかも」

「なんで?」

「サービス券、三人分在るからさ。白雪ちゃんにお土産買っていきたい」

「あーいいね。大丈夫、俺が持つよ」

「ありがとう。でもさ、白雪ちゃんってお祭りだったら焼きとうもろこしが大好きなんだって。ちょっと意外じゃない?」

「あはは、確かに。いちご飴とかわたがしとか食べてそう」

「だよね。サービス券は焼きとうもろこし無いけどいいよね。でも勿体無いから焼きそばとかも買っちゃおーっと」

「うん。持って帰ればママさん達も喜ぶでしょ」

「だよね!」

結はいつだって私が嬉しそうにしていると自分のことみたいに楽しそうにしてくれる。
お祭りに来られない白雪ちゃんにおうちでお祭り気分を味わって欲しかったから
私は本当に嬉しかった。
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