キスより甘い毒りんご
最後の花火から尻尾みたいに火花がパラパラと落ちて、
空が真っ暗になった。

火薬の残り香がする。

花火が終わってからも見惚れるように空を見上げていた人達が
一人、二人……と余韻に浸りながらも反対方向へと背を向けていく。

「行こっか」

結に促されて頷いた。
それから順番に結が出店のおじさん達にお願いしてくれていた焼きそばやたこ焼き達を迎えに行った。

最後はりんご飴。
出店のおじさんは好きな物を選ばせてくれて、
中でも一番大きくてツヤツヤの物を選んだ。
白雪ちゃんのツヤツヤの瞳とよく似ていた。

「急いで帰ろっか。りんご飴、溶けちゃうかもだし」

「そうだね。結も寄ってくでしょ?」

「いいの?」

「もちろん。ママも会いたがってたし。汗かいたでしょ?シャワーも浴びてって」

「悪いよ」

「いーの、いーの。またパパのシャツ借りればいいし」

結は既に親公認だからうちにお泊まりすることもよくある。
私は一人っ子で、うちにはパパ以外の男性が居ないから息子ができたみたいで結のことをすごく気に入ってくれている。

お風呂上がりに照れたように結にシャツを貸すパパのことを思い出して
二人で笑った。
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