キスより甘い毒りんご
結は両手に白雪ちゃんへのお土産の袋を抱えてくれた。
私はたった一つの宝物を守るように、りんご飴を大事に両手で持った。

白雪ちゃんがどんな表情をするか楽しみだった。

花火は終わったけれどお祭りに集まっていた人達はまだまだ余韻を楽しんでいるのか
帰路についている人は少ない。

いつもは不気味な雰囲気を醸し出す夜の神社が今日はどこよりも賑やかだ。

神社から出て、街灯が無い場所まで出るとすごく静寂に包まれている気がする。
りんご飴を片手だけに持ち替えて結の腕をそっと掴んだら、腕を掴まれた結がピタッと立ち止まった。

「結?」

「なんか鳴ってない?」

「え?」

「……のの、スマホ鳴ってる?」

耳を澄ませた。

腕に引っ掛けている巾着バッグの中で、確かにわずかな震えを感じる。
歩きながらバッグ自体が揺れていたから全然気づいていなかった。

「ほんとだ」

バッグからスマホを取り出した。

着信を知らせるバイブレーションの震え。
白雪ちゃん……?

「どうした?」

「白雪ちゃんから」

「お。やっぱり来たくなっちゃったとか?」

「えー?もう終わっちゃったのに?」

だったら可愛いなぁって思いながら、
少し浮ついた声で私は着信に応答した。

「もしもーし」

「助けてッッッ!!!!」

「え」
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