キスより甘い毒りんご
「ゆ……ゆいっ……ごめん、救急車呼んでもらってもいい?」

「うん」

白雪ちゃんの体を抱えるようにして頭を私の膝に寝かせた。
額にはひどい汗。
巾着の中からハンカチを出して汗を拭ってあげる。

体がすごく熱い。
事務所の人達は白雪ちゃんがグッタリしていたと言っていた。
マネさんが「脱水症状かも」って言っていた、とも……。

白雪ちゃんから連絡をもらってから一時間は経っているから
事務所を出てからはどれくらい経っているのだろう。

かなりマズイ状況かもしれない。

っていうか……マネさんが全然目を覚まさない。
呼吸はしているみたいだけど……最悪な結末が頭をよぎって、
打ち消そうと頭を横に振った。

「救急車すぐに来るって!」

「ありがとう……ねぇ大丈夫かな……」

「大丈夫だよ。大丈夫だから」

救急車が来るまでの間、結はずっと私の背中をさすってくれながら
自分のハンカチでマネさんの額を拭ってあげていた。

救急車のサイレンの音がマンションに近づいてきた時、
ホッとして身体中が脱力感に見舞われた。
< 58 / 85 >

この作品をシェア

pagetop