キスより甘い毒りんご
「ぃ……のい…………」

ふっ、と目が覚めた。

閉めたままのカーテンの隙間から細く光が差し込んでいる。
光の筋に室内の塵がキラキラと煌めいている。

「しっ……白雪ちゃんっ……!」

自分の腕を枕にして眠ってしまっていたようだ。
白雪ちゃんが目を細めて微笑みながら私を見つめていた。

「のの。ありがとう」

「白雪ちゃん!大丈夫!?」

「えぇ。平気よ」

白雪ちゃんの声は少しかすれている。
一定のリズムで聴こえる静かな呼吸音が涙腺をゆるませる。

「よかっ……よかったぁ……白雪ちゃんーー……よかったよぉ!」

白雪ちゃんが頭を撫でてくれる。
病人なのにギューッて抱き締めてしまった私に白雪ちゃんは「痛い痛い」って笑った。

「ママ!白雪ちゃんが!」

ソファで座ったまま眠っていたママが目を覚まして
痛くなってしまったのか首を回しながら、ハッとして立ち上がった。

「白雪ちゃん!?……あー……良かった、目が覚めたのね」

「ママさん。ご心配おかけしてごめんなさい」

「本当によかった。早く気づいてあげられなくてごめんね」

白雪ちゃんはすっかり溶けてぽよぽよになってしまった氷枕の上で首を横に振った。

「眠りながらなんとなく、ののとママさんの気配を感じてました。安心したんです。あぁ、私は大丈夫だって」

ママの瞳が涙で潤んでいる。
白雪ちゃんが私の手をギュッて握った。
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