キスより甘い毒りんご
電話を切って、改めて結の存在の大きさを想った。

結が居なかったら私はなんにもできなかったかもしれない。
そばに居てくれたから、今一番なにをすべきかが解った。

支えられている。
そんな大切なことを普段はきちんと考えもしないで
こんな時に実感してしまうなんて。

大切にしよう。
結がしてくれたように。
それ以上に。
私が居るから大丈夫だって結にも思ってもらえるように。

夕方には白雪ちゃんもマネさんも随分と回復したみたいだった。
一日中病院で付きっきりになるわけにもいかないからお仕事に戻っていた社長さんがもう一度お見舞いに来て、
大事を取って明日まで二人を療養させると言った。

今日も一緒に病院に泊まると言った私に
白雪ちゃんは「絶対に帰りなさい!」って言った。

「やだよ。心配だもん」

「もう本当に大丈夫だから。ののが居てくれてすっごく安心したのは本当だよ。でもののだってさすがに疲労が溜まってるでしょ?次はののが倒れでもしたらママさんに顔向けできないわ」

「ここでちゃんと寝るから」

「だーめ。おんなじ睡眠でもね、自分のベッドでしっかり寝るのとは疲労回復が全然違うの。ね、私を安心させたいんでしょ?だったらいい子で帰宅して、ちゃーんと休むこと!」

「いい子で、って……」

弱っているのは白雪ちゃんのほうなのに私のほうが諭されてしまった。
そこまで言われたら言うことを聞くしかなくなってしまう。
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