キスより甘い毒りんご
「あのね、白雪ちゃんにもお祭りを味わって欲しくて。あの日、白雪ちゃんは当たり前にうちに帰宅してくるんだって信じてた。いつもみたいに″レッスン疲れたー″なんて言いながらシャワー浴びてさ。それから一緒にお祭り屋さんでもしようかなって…焼きそばとかたこ焼きとかも買ったんだよ」

「のの……ありがとう。そんなこと考えてくれてたんだね」

「花火もさ、打ち上げは無理だけど手持ちならどこかできる場所があるかもなんて思って。でもね……」

「うん」

「毎日毎日続いてる日常が当たり前なんかじゃないって気づいたの」

「そうだね」

「だってそもそもだよ?白雪ちゃんと同居してること自体がバグなんだから!」

「ふふ…ののってば相変わらずね」

「当たり前だと思ってる日常が明日には、一秒後には変わってしまうかもしれない。そんな時に突然大切なものを思い出したかのように後悔するみたいなバカなことはしたくない。眠ってる白雪ちゃんを見ながらね、思ったの。どんなに鬱陶しがられたとしてもずーっと″大切″を伝え続けようって。一緒にお祭りに行ったり花火を見ることが出来なくても、あの私の狭い部屋で白雪ちゃんと肩を並べていられる奇跡を忘れないでいたいって」

「私もよ。ののに出逢えたことはきっとご褒美だったのよ。今まで女子高生としてのいろんなことを諦めてきたけど……ののに出逢えた。これからは同じ目線であなたと笑い合ってもいいんだよね?」

「うんっ……うん!」

「のの。大好きよ」

今すぐ白雪ちゃんに飛びついて抱き締めたかったけれど
まだまだ病み上がりだから我慢した。

「大好き」って大声で言ったら「知ってる」なんて笑われた。
< 67 / 85 >

この作品をシェア

pagetop