キスより甘い毒りんご
マネさんの病室の前まで行って扉をコンコンってノックしたら
中からマネさんの返答が聞こえてきた。

ママが引き扉を開けて、ペコッと会釈する。
マネさんはきっちりとスーツを着ていて
今すぐにでも出勤できそうだった。

既に到着していた社長さんが頭を下げて、
マネさんが一歩前に出た。

「この度は本当にお世話になりました。ご迷惑をお掛けして申し訳ございません」

白雪ちゃん同様、タレントに就くマネさんもレッスンがあるのかもしれないと思えるほど、きれいなお辞儀だった。

「それはもう何度も社長さんがおっしゃってくださったわ。言ったじゃないですか。何かあったら助け合いましょうねって」

「それはっ……森野のことであって僕がご迷惑をお掛けするなんて言語両断……」

「誰にも迷惑掛けないで生きていける人なんていないんですよ。気をつけていれば絶対に転ばない、なんてこともないでしょう?転んでる人がいれば手を差し伸べたい。それだけなんです」

ママの顔をジッと見たマネさんは、また深々とお辞儀をした。
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