キスより甘い毒りんご
「でも実際に私が白雪ちゃん達を見つけたのはマネさんのマンションだった。どうしてですか?」

「きちんと野々井さんのお宅に送り届けるつもりでした。それが……」

「それが?」

「新美さん、途中で運転できなくなっちゃって」

「どういうこと?」

「突然だったんです。奇跡的に走行中は問題なかったんですけど。こちらに向かっている途中でコンビニに立ち寄りました。何か白雪さんに飲ませなくてはと思って。それからおでこに貼る冷却シートと氷も購入しました。車に戻る途中でした。地震か?と思う程度の揺れを足元に感じたのと同時にふっと周囲の音が遮断されて視界が狭まっていくような……」

「えっ……マネさんまで……」

「しゃがんでいるとだんだんと視界は開けてきます。ただのめまいかと思って立ち上がるとまた見えなくなってくる……でもその時にはまだ意識ははっきりしていて。車には白雪さんが乗っている。ここで自分が倒れたら白雪さんが本当に死んでしまうかもしれないし、そうじゃなくてもひどい騒ぎになってしまう。そう思って自分を奮い立たせてなんとか車に戻りました」

「きみはそのまま運転をしたのかね?」

社長さんの厳しい声。
けれど私もママも同意だった。

自分の健康状態が良好ではないと認識していながら、白雪ちゃんを乗せて行った行為がどれだけ危険なものだったか。
白雪ちゃんを助けたいと思う気持ちと、その行動はあまりにも反比例している。
決して許される判断ではない。

「申し訳ございませんでした。どれだけ軽率で非道な判断だったのか……思い返すだけで恥ずかしくてたまりません」

「あなたが白雪ちゃんを救いたかった気持ちは理解できるわ。だけどあなたが白雪ちゃんを殺していたかもしれない。誰よりも白雪ちゃんを守るべき立場にいるあなたが。反省だけでは足りない行いだったかもしれない。これから先、よーく考えて判断していただきたいです。保護責任のある私どもからもお願い致します」

「はい……本当に申し訳ございませんでした」
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