キスより甘い毒りんご
「新美さんの体調不良の原因は?」

訊いたママにマネさんはちょっと俯いて恥ずかしそうに「睡眠不足です」と呟いた。

「睡眠不足?」

白雪ちゃんは未成年なこともあって日付が変わるまでの仕事はできない。
マネージャー業は特殊な業務なこともあって白雪ちゃんが帰宅してからも業務があるのだろう。

病院の先生の話では、睡眠不足が祟って今回のマネさんみたいに立っていることすら困難になったり、
冷や汗や目の前が真っ暗になって失神してしまうらしい。

筋緊張低下が原因になるみたい。

最悪の場合、不整脈とか突然死に繋がる可能性のある、恐ろしい症状であることを今回の件で初めて知った。

「白雪には三日間の休息を義務付けた。新美くんもその期間にしっかりと静養しなさい」

「これ以上のご迷惑はかけられません!明日からはきちんと復帰させていただきます」

「これは社長命令だ。きみの身体も心も驚いてしまったって証拠だろう。もしもまた同じことになりでもしたらそれこそ、今度こそ迷惑をかけると思ってくれ。きみがこんな状態になるまでの寝不足続きだったことは病室で事情を話してくれたね。今回は問いたださないでおこう。これからのきみに期待しているんだ。白雪を守ってもらわないと困るからね」

「はい……はい……ありがとうございます」

はぁー……って長く深い溜め息を吐き出した私を白雪ちゃんがクスッて笑って、
見つめながら言った。

「どうして泣いてるの」

「怖かった……怖かったの……!」

「のの……」

「本当に死んじゃうかと思った。こんなことになるんならレッスンになんか行かせないで私もお祭りには行かないでずっと一緒にうちに居ればよかったって思った。白雪ちゃんがずーっと居てくれるならどんなに楽しいイベントも何もなくったってよかったのにって……もう私から白雪ちゃんを奪わないで……」
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