キスより甘い毒りんご

これが漫画やアニメならママの周りにはぽやぽやと可憐なお花や、
やわらかそうな光が舞っているに違いない。

娘がもう一人できたみたいで嬉しいのか、
スーパーアイドルとのこれから始まる夢みたいな生活に浮かれているのか分からないけれど
上機嫌を通り越した、初めて見るママの様子だった。

「ののは嫌？」

「嫌っていうか」

「っていうか？」

「困る」

「困る？」

「めちゃめちゃ変な寝言とか言うかもしれないし、いびきとか歯軋りとかホラー並みにやっちゃってるかもだし、寝起きのスーパー汚い顔面も髪も……！こんな奇跡みたいに可愛い女の子に見せるくらいなら死んだほうがマシ！」

「大袈裟だなぁ。おんなじ人間なのに」

「ンなわけ……」

自己肯定感の低い（っていうか白雪ちゃんと比較すれば誰だってそうだと思う）私を白雪ちゃんは楽しそうにくすくすと笑った。

「私は人間らしくいて欲しいわよ。それを晒しても大丈夫だって思ってもらえる存在になりたいしね」

これがアイドルの力？
養成所でのレッスンに含まれているのだろうか……。

こうして、ある日突然私の日常は変わった。

やけに順応力の高い国民的超絶美少女アイドルとの同居（！？）生活。
一体何日耐えられるのでしょうか……！？