キスより甘い毒りんご
白雪ちゃんは今回の件を面白がって(ぜんっぜん笑い事じゃないんだけど!)
公式ホームページ内のインターネット限定グッズとして保冷剤収納ポーチ、急速充電機能付きハンディファン、
タオル(これにもポケットが付いていて保冷剤なんかを入れられる)を販売し、
さらには熱中症や脱水症状防止に効くドリンクの開発にまで携わった。

全てのグッズがサーバーダウンを引き起こすほどに需要が高まってしまい、生産が追いつかないほどにまで飛ぶように売れた。

一連の騒ぎがようやく落ち着いてきた頃。
夏休みはとっくに終わっていて、私と結は日常の学校生活へと戻った。

白雪ちゃんは相変わらず多忙の毎日で、たまに登校できる日には
なんだか制服姿に見慣れなくてコスプレみたいだと、照れ笑いを浮かべながら登校していた。

二学期の中間テストが終わって、久しぶりに結がうちに遊びに来た。
その日は白雪ちゃんも午前中だけでお仕事が終わっていて、
私達が帰宅する頃にはリビングでティータイムをしていた。

白雪ちゃんが初めて野々井家に来た日を思い出した。

細くて華奢な指先でカップを持ち上げる仕草。
折れそうな細い三日月みたいに薄くてクッと口角の上がった口元。
息を飲むほどの超絶美少女。

「おかえりなさい」

私と結を見て微笑む白雪ちゃんは本当にこの俗世には相応しくない、羽根をもがれた天使みたいだ。
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