キスより甘い毒りんご
レンアイのカタチ
翌朝。

身に染みついた慣習というのは恐ろしいもので
あれだけイレギュラーな出来事が巻き起ころうとも身体(からだ)は日常を当たり前に繰り返す。

寝ぼけまなこのまま、おもむろにスマホの画面を見つめる。
体はベッドに預けたまま、大の字になって背伸びからの大あくび。

そこでようやく脳裏にふっと白雪ちゃんのお上品な微笑みがよぎって、
ハッとして伸びのポーズのまま固まった。

360度一回転するんじゃないかって勢いで首を振って
昨晩白雪ちゃんの為に敷いたお客様用の布団を見た。

……居ない。

はしたない姿を見られなくて済んだことにはホッとしたのも束の間。

ひょっとしてやっぱり夜中、無意識にお下品な姿を晒し過ぎてゲンナリした結果、帰ってしまったんじゃないかと青ざめた。

「どうしてもあなたがベッドで寝てくれ!あなたより高い位置で寝るなんてできない!」と訴える私に
白雪ちゃんは「変な人」とだけ言って、床に敷いた布団でスヤスヤと気持ち良さそうに眠りに就いた。

けれどやっぱり身分知らずな私を内心怒っていたのかもしれない。

絶望する私を大声で呼ぶママの声。

玄関の外から聞こえる気がする。
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