能ある女は本心を隠す
「貴方が新参の徳妃、李徳妃ね。私は貴妃、許籃華(キョ・ランファ)よ。」

柔らかく微笑む彼女は黒く艶やかな髪を綺麗に結い上げ紅玉のような瞳を持った王道美人だった。

一見穏やかそうに見えるが幾ら笑顔でも目は絶対に笑っていない。私には分かる。それは野心に燃える目、私も同じだからだ。

「お初にお目にかかります許貴妃様、貴妃様の言う通り、北部から参りました徳妃の李愛琳でございます。今日はお顔合わせに伺いました。」

私が拱手礼をするとそんな堅苦しいことはいいわよ、と制止した。このタイプは胸中を絶対に他人に明かしたりはしない。いくら回りくどくても確実に相手を貶めるタイプだろう。

でないとこの地位に上り詰めることが出来た理由がつかない。許貴妃様のお言葉により、赤と金を基調とした長椅子に腰掛ける。

「このような機会を下さり、ありがとうございます。」

私が形だけの挨拶をすると許貴妃様はいいえと首を横に振った。

「私も同じ後宮で切磋琢磨しあう者故、貴方に会いたかったから気にしないで?陛下は中々女に興味が無い方だから⋯苦労するかもしれないけれどお互いに頑張りましょう?」

許貴妃様は切れ長の目を細め、扇子で仰ぐ。

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