能ある女は本心を隠す
「そうですね⋯私も初夜限りにならないよう努めますわ」

私が穏やかに微笑むと一瞬許貴妃様の表情が崩れた。驚いたような怒るような、憎しみに震える表情。だがそれは私以外に見られることなく微笑みに変わった。

「そう、貴方は御通りがあったのね⋯御通りが無いまま終わる人も居るのよ、盧元徳妃もそうね。御通りがあっただけ良いほうね、」

穏やかな笑顔だが、目の奥には野心がふつふつと燃え上がっている。私は笑い返し、少しばかり世間話で時間を潰すと鵲宮を後にした。きっと許貴妃様が四夫人の中で一番難関な相手だろう。

「あっ羽織⋯桃麗、、悪いけど羽織を忘れてしまったみたいだから、鵲宮に取りに行ってくれる?」

帰りの道中、鵲宮に羽織を忘れたことに気がついた私は、侍女の桃麗に取りに行かせた。そして私は部屋に戻り、夜の準備をした。
< 11 / 13 >

この作品をシェア

pagetop