能ある女は本心を隠す
「それで?籃華との茶会はどうだった?」

現在夜七時半。約束通り昨日と同じ位の時刻に来た陽谷様と晩御飯を食べ、今はお風呂に入っている。私を後ろから抱き締めながらそんな事を聞かれる。

ここは無難に答えておいた方がいいだろう。何せ陽谷様と許貴妃様は幼馴染なのだ。

「うーん、そうですねぇ⋯⋯とても穏やかな人だと思いましたよ、ずっと微笑んでらっしゃったので」

私が少し動くと波紋が広がった。陽谷様は私の首筋に顔を埋めながら適当な相槌をつき、少し笑った。

「藍華が穏やかか…そうか、彼奴が、、」

許貴妃様はどうやら昔は穏やかではなかったらしい。一瞬見せたあの時の表情はその片鱗か。

「あぁそうだ、愛琳」

その後、しばらく沈黙が続き何を思い立ったか急に陽
谷様が話しかけてくる。

私が応じると、言葉を続けた。

「朕は六日後隣国の皇帝との会談するため用意をしなければならない。それ故、明日からお前の元に来れなくなる。…すまないな」
皇帝という立場上、国政や国際交流など避けては通れない仕事があることは周知の事実だった。それに対してどう思う、というかあれこれ考えたところで私には発言する権利がない。

なのに、どうして陽谷様はこんなにも申し訳なさそうな顔をするのだろうか?父の演じていた申し訳なさそうに見える表情とは違いすぎて周章狼狽してしまう。

< 12 / 13 >

この作品をシェア

pagetop