君の王子になりたくて


リビングのソファーに座ると響くんが私の隣へ腰を下ろす
気まづい空気に包まれて、私達は座ったまま動かない

どうしよう…

話したいことは沢山あるのに、声が出せない



「ごめん…」



先に沈黙を破ったのは響くんだった



「どうして謝るの…?」


「綴ちゃんが俺の事、幼なじみとしか見てないってわかってたのに勝手に彼氏になったりして」


あ…
違うよ、違うの響くん

あの時そんなふうに言っちゃったのは…



「だから、ちゃんと幼なじみに戻ろ」



そんな言葉にピクリと体が揺れた

何、それ…
そんなの自分勝手だよ
彼氏になるって言ったり、幼なじみに戻るって言ったり

だけどその理由は明白で


「やっぱり山田さんと付き合うの?」


お互い視線を合わせないまま会話を交わす
今、響くんがどんな表情をしているか見る勇気なんて私には無い


「ちがうよ」


「ちがわないよ…、だってキスしてたもんね」


子供の頃からスキンシップの延長でしていた私とは違うでしょう?
隠さなくていいのに…
否定されると余計に虚しくなるよ


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