君の王子になりたくて
「…どんなに頑張っても俺は綴ちゃんの幼なじみ?」
掠れた声が私の耳に届いて振り向いた
響くんと目が合う
そんな、傷ついた顔…しないでよ
どうして?
山田さんのこと好きだからあんなことしてたんじゃないの?
わからないよ…
「待っててって言ったのに…
邪魔されちゃったね早川くん」
「っ…」
準備室の扉から現れた山田さんはぴたり、と響くんに顔を寄せて腕を回した
それを拒みもせず、ただ苦しそうにしているだけの響くんにどうしてか腹が立つ
「響くんの好きって幼なじみの好きだったんだよね
大丈夫だよ、わかってるから…」
「…っ、それは
綴ちゃんの方でしょ…」
「え…」
どういう意味?、と聞き返す前に響くんは唇を噛み締めて私から視線を外してしまう
「もういこうよ早川くん、真田さんだって伊月と一緒がいいみたいだし」
山田さんが私達の会話を遮って止める
伊月くんに掴まれたままの腕をちら、と見られてハッとした
だけど、私をあの場から離れさせようとしてくれた手を自分からは振りほどけない