君の王子になりたくて

響くんと喧嘩したいわけじゃないのに
どうしてこうなっちゃうんだろ


「…そう、じゃあ伊月と恋したら?」


「…っ」


「そんなに伊月がいいならさ」



あんなにヤキモチやいてた響くんがそんなこと言うなんて

もう、私には幼なじみとしての好きすらなくなっちゃったの?

でも、仕方ないね
響くんには山田さんがいるから


ぽたぽた、と気づいたら目から涙が溢れてる
制服にいくつもしみをつくるそれが熱くてたまらない



「綴ちゃ…」



「真田さん、行こう」



伊月くんが響くんの声をさえぎって私を呼ぶ
肩に手を回されて私を支えるように歩いてくれた

涙で視界が滲んでよく見えないから今は伊月くんに甘えよう…

そうして体を預けて歩くと伊月くんは一瞬立ち止まる



「大事な女、泣かせてんじゃねぇよ」



そんなセリフを響くんに投げつけて、理科室を後にした




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