君の王子になりたくて
大切にしたいのに
♢♢♢
said︎︎︎︎▷響
「大事な女、泣かせてんじゃねぇよ」
同じクラスの伊月 文哉(いづき ふみや)は冷たい視線を向けた後、俺の幼なじみを連れて理科室から出ていった
綴ちゃんは俺の前で泣いたことがない
母さんが亡くなった時でさえ、俺のことを励まして暗い顔なんて見せなかったのに
俺のせいで綴ちゃんが泣いた
悲しい思いをさせた
そんな事実が心に突き刺さって身動きが取れない
「ね、ねぇ早川くん…ほんとに私じゃないよ?」
放心状態の俺にするり、と腕を回してくる山田さんは一体俺のどこがいいんだろうか
学校での取り繕った姿しか知らないのに、上辺だけの俺しか知らないのに、何がそんなにいいんだろう
くそ、あんなこと思ってないのに口出すなんて
『伊月と恋したら』なんて思ってもいないのに
なんであんなこと言ったんだよ