これを運命というのなら
「食べ終わったら、どこに行きたい?」


あの場所へ行く前に、綾乃が行きたい所へと希望を訊く。

昨日、考えといて、と言った手前。


「色々と考えたんですけど……スカイビルに行きたいです!」


行ったこたてないんです!、と。


今、連れて行ってあげたいんやけど。

スカイビルに行くなら夜やろ。

だから、スカイビルからの夜景は?


「夜景?行きたいです!」


ほら、またこの笑顔を向けられたら……先に連れて行きたい場所があるねん。

どこですか?

秘密や!着くまでの。



食べ終えてから、目処は半年後。

遅くても1年後。

この場所へ一緒にけーへんか?


連れて来たかった場所は、オフィス街ビルの27階。


「……独立……ですか?」


「そうや。畑中と一緒に会社を立ち上げる。まだ何にも決まってへんけど、レンタルオフィスでな。毎月、賃料を払ってるねん」


「私なんかが一緒に来ていいんですか?」


「あぁー……。綾乃に着いて来てほしい。綾乃にしか出来へん事がある、頼まれへんことがある。倒産なんてさせへん、必ず成功させる。俺を信じろ!」


プロポーズみたいだな、と思いながら。

受け取ってくれる?

綾乃のイニシャルと、俺と畑中のイニシャル、綾乃は特別に綾乃の誕生石のトップが着いたネックレスを、チノパンのポケットから出すと。

目を大きく見開いて、それは?


「約束の証や!俺も畑中も同じものを着けてる。綾乃が着いて来てくれるなら、綾乃のイニシャルを足す」


「……そんな素敵な約束の証を作っていただけたのに断れないじゃないですか……断わってたらどうしてたんですか?」


そんなことは決まってる。


着いて来ると言うまで口説くに決まってるやろ、と。

YESやんな?

はい!着いて行きます!
ペンダント……着けてください?


背中を向けた綾乃の首にネックレスを着けると、振り向いて。


「ありがとうございます」


上目遣いでくれた満面の無邪気な笑顔。

守ってやるからな。

面接での言葉通り、この笑顔が曇らないように。

もっともっと成長させてやる。

俺が責任を持って。
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