これを運命というのなら
可愛いことしてくれるな……

部長の呟きが聴こえて、腕を解こうとすると―――

私の手を握って。


「その約束、守れな?それから……綾乃が苦しい時、辛い時、悲しい時、泣きたい時は俺を呼べ。どこにいても何をしていても駆け付ける。綾乃が成長し続ける未来も、心も俺が守る。安心して委ねろ!」


それは、まるでプロポーズみたいで。

背中越しに笑った私に、お前な……と微笑んだ?


ようやく解かれた腕。

そして、向き合った瞬間に私は部長の腕の中にいた。


「まるで、プロポーズみたいな答えは?」


「もちろんYESです!」


YES以外は受け付けない、と頭を抱きしめたまま撫でてくれる。


なんやろ?心地いい。

安心する。

僅かに香る部長の爽やかな香水のせいもあるんかな?

いやいや……違う!

ドキドキの早鐘が同じリズムで刻まれていて、少しでも長く聴いていたい。

そんな感じを、恋と呼ぶのか……

呼ぶなら、そうなのかもしれない。

私の中で尊敬できる上司を、ひとりの男性として意識した瞬間に―――

部長の柔らかい唇が前髪に触れた。



だけど、今はまだお互いに仕事に支障が出る気がするから。

上司と部下のままでいい。
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